少年シニア55歳から学ぶ理科を転載させていただきました
()
★
地球のことを学ぶにあたり、まずこの動画をみました。これは、科学者でありサイエンスライターでもあるカール・セーガンの語りで紹介されたものです。
セーガンは木星以遠の外惑星探査機「ボイジャー」が土星を通過した後に、地球の方を振り返ってその点のような祖国を写真にとることを提案しました。まだ天王星・海王星の探査任務が残っていたため、この提案は、すべての任務を終えた後に実行されました。
★ ★
Pale Blue Dot(青白い点)という表現を使って,地球が特別な存在でないことを伝えるセーガン。しかし彼は地球がちっぽけで取るに足りないものであることを伝えたかったわけではないでしょう。むしろその逆です。ちっぽけな存在であろうと我々にとっては唯一無二の地球を宇宙から眺めることで、かけがえのない地球に敬意をはらうこと、そして無意味な争いや私欲のために人類同士が互いを傷つけていることへの警鐘を鳴らしているのだと思います。映像の最後を締めくくるこの言葉にすべてがこめられていると思いました。
私にとってこの映像は、私たちの責任を表しているようにみえる
もっとお互いに気をくばり、この青白い点を大切にする責任を
私たちの知っている ただひとつの故郷を
【使用教材】地球ウォッチング 著者 古儀君男 2013年11月刊 新日本出版社
★
このような本を待望していました。というか出来れば10年後くらいに私がこんな本を出したいと思っていました。地球の成り立ちに関連する場所を訪問し、海外旅行も楽しんでしまうというコンセプト。素晴らしいと思います。本書を執筆した古儀氏は高校教師。大学では地質学を専攻されておられますので、単なる海外旅行ではなくご自分の研究・研鑽もかねるという面もあるのでしょうが、地球人である以上、誰もがこんな旅行を体験してみることは、とても意義深いと思います。
★ ★
本書では24箇所 地球の成り立ちや組成について関連のある場所をピックアップし解説と旅行記が示しています。一例をあげると
イエローナイフ(カナダ)→地球最古の岩石が発見された場所
西オーストラリア → 鉄と酸素の起源をとどめる場所
バージェス(カナダ)→ カンブリア紀の生物の化石が発見された場所
オマーン → 地球内部のモホ面(地殻とマントルの境界)が露出している場所
ユカタン半島(メキシコ) → 恐竜を絶滅させたと言われる隕石の落下場所
ガラバゴス諸島(エクアドル) → ダーウインの進化論を産んだ場所
スマトラ島トバ湖(インドネシア)→ 人類絶滅の危機に陥れた巨大火山がある場所
アイスランド → 地上で見ることができるプレートが誕生する場所
★ ★ ★
本書でありがたいのは、その場所に到るまでの道筋や見どころなどが示されているところです。オプショナルツアー等を紹介する箇所もあるのですが、料金が示されていたり、ガイドとのやりとり等も具体的に書かれているので、自分が行ってみたいと思ったときに大変に参考になると思います。
もちろん専門家としての解説も、普段高校生に教えておられたこともあるのでしょうがすっと頭にはいってきます。「ニュージーランドの現在の生態系は西洋からもちこまれた動植物が主になってしまっている」ことや「東アフリカの大地溝体は、地下のホットプルームが送り出したもので、いまでも一年で5_の割合で大地を引き裂いている」ことなど知らなかったことが、ばんばん出てきて大変興味深かったです。
★ ★ ★ ★
古儀氏ほどでないにせよ、私もこれから地球の歴史をかいまみれる場所に行ってみたいと思っています。本書で取り上げられた場所のみならず、独自の生態系を築いた「マダガスカル」。昔は青々とした緑があったと言われる「グリーンランド」。隕石の宝庫と言われる「南極大陸」。日本では、固有の生態系をもつ「小笠原諸島」や「屋久島」など死ぬまでに行ってみたい場所は数々あります。当然ながら自分は知らないことだらけ、見たことがないものだらけ。だからこそ死ぬまで面白い。そう思います。
【使用教材】一冊で読む地球の歴史としくみ 著者 山賀進 2010年12月刊ペレ出版
★
地球がいつどのようにして誕生したのか。地学の一丁目一番地のお題だと思うんですが、学生時代にきっちり教わった記憶がありません。先生は話してくれていたのかも知れないけど、自分に興味がなかったんでスルーしちゃったんでしょうか? いずれにしても地球人の一員としては、きっちり理解しておかねばならぬと反省し早速勉強です。本書を読むと、地球の物語かなりドラマチックですし、波瀾万丈です。
★ ★
ドラマ仕立てで表現すれば地球誕生は、こんな感じでしょうか。
50億年ほど前に、質量が太陽の8倍以上もある恒星の寿命が尽き、超新星爆発をおこして、原始太陽系星雲を形作る材料が宇宙空間に供給されるのが第一幕。
材料の星間ガスの密集地帯で互いの引力による集積がおこり原始太陽ができ、その回りに円盤状に惑星の材料となるガスやダストが旋回するのが第二幕。
円盤状に周回する塵が衝突し直径10`程度の岩石・金属を主成分とした小物体になり、さらに衝突合体をくりかえして、現在の10分の1程度の大きさの原始地球が約46億年前に誕生したのが第三幕。
さらに地球へ微惑星や隕石が衝突。その衝撃による高熱で地球の岩石はどろどろとけてマグマの海を形成。 重い鉄が沈み核となり、現在のような内部構造になったのが第四幕。
微惑星の衝突により脱ガスがおき、水蒸気や二酸化炭素・窒素を成分とした大気を形成。その後は衝突もおさまり地球の冷却により水蒸気が大量の雨となって落下し、海を形成したのが第五幕。
★ ★ ★
この後も「生命の誕生」「生命による酸素供給」「全地球凍結」「超大陸の形成」などなど、波瀾万丈の運命が待ち受けています。最近とみに「地球にやさしく」といった趣旨の発言を耳にしたりしますが、地球はそんなやわではなく、やさしくすべきは地球で生かされている我々人類も含めた生命なんだと思います。
★ ★ ★ ★
こうしてみると我が地球は、様々な微惑星の寄せ集めであり、原始地球後も降り注ぐ隕石や彗星が、その後の地球の運命に大きく影響を与えていることがわかります。生命の誕生についてはまだはっきり解明されていませんが、地球内部からではなく隕石が運んできたという説がありますし、生命に欠かせない水も隕石や彗星が運んできたという説があります。近く打ち上げられる「小惑星探査機はやぶさ2」のターゲットは、有機物や水が存在する可能性の高い小惑星だそうです。まさに地球が誕生した当時のままの組成を維持した貴重な試料を得れる可能性があります。また新たな地球誕生の秘密が明らかにされるかもしれません。
【使用教材】大気の進化46億年 著者 田辺英一 2011年9月刊 技術評論社
★
地球の温暖化にともない、温室効果のある二酸化炭素の増減に大きな注目が寄せられていることは周知の通りです。現在の大気は、窒素78% 酸素21% アルゴン0.9% 二酸化炭素0.04%。比率は些少とはいえ産業革命以降、二酸化炭素は確実に増え続けています。
ただ地球の誕生からという超長期的な視点でみると、実は二酸化炭素は増減を繰り返しながらも基本的には減少し続けているようです。地球が誕生した時の大気組成は二酸化炭素と水蒸気・窒素が主で酸素はありませんでした。この組成が様々な要因(海や生命の誕生や火山の爆発等)で変化し、変化することで地球の環境を変えていく。大気の変化は地球の運命を握っているのです。
★ ★
悪者扱いにされがちな二酸化炭素ですが、実は大気に二酸化炭素がなければ、地球の平均温度はマイナス18度となり地球全体が凍結するそうです。この全球凍結は実は46億年の地球の歴史の中で少なくとも三度(22億・7億・6.5億年前)発生したらしい。何かの要因(火山の大噴火等)で寒冷化したのでしょうか、生命の多くは死滅しました。ただその間も火山活動による二酸化炭素の排出は続いており、更には凍結により二酸化炭素が吸収されない中で次第に大気中の二酸化炭素が増加し、その温室効果で再度温度が上昇し全球凍結は解消します。そしてその後は何と逆に平均60度という灼熱の地球に変わり、更には生命の進化や大増殖と続いていきます。本当に地球はワイルドであります。
★ ★ ★
恐竜が闊歩していた1億年前は今より10倍近くの二酸化炭素があり超温暖期だったようです。逆に酸素は15%程度(今は21%)と少なく、酸素を効率的に吸入できない動物にとっては苦しい時代だったと思われます。事実わがご先祖様の哺乳類は大型化できず恐竜に怯え小さくなって隠れていたようです。なのに恐竜はなぜあれだけ大型化し低酸素状態を苦にしなかったのか。
実は鳥類は恐竜から進化したと言われており、この鳥類は気嚢という抜群に効率よく酸素をとりこめる器官をもっています。それで鳥類は低気圧の上空を休むことなく飛び続けることができるのです。どうも恐竜もこの気嚢をもっていたと言われます。まさにその時代の大気組成に有利な生物が発展していくのですね。
★ ★ ★ ★
大気組成が生命の運命を決めることを知れば、我々は大気に無関心ではいられません。また長期トレンドを理解することは重要ですが、目の前に発生する諸問題も決して疎かにはできません。オゾン層の崩壊をうながしたフロンの問題や極度な森林の伐採もそうですが、人為的な環境破壊のつけは人類も含めすべての生命にまわってきます。その点を忘れずに自分は何をできるか 考え続けていきたいと思います。
【使用教材】雲の発明 著者Rハンブリン 訳者 小田川佳子 2007年1月刊 扶桑社
?
生命は海の中で誕生したという説が有力です。しかし地球が誕生した時の海はどろどろのマグマに覆われていて今の海とは程遠いものでした。少なくとも水の海ではありません。但し大気上には水蒸気が集積し雲が形成され、雨になるのを今か今かと待ち受けていました。まず海が形成される前には雲が形成されていたわけです。そこで海の誕生を学ぶ前に本日は雲の勉強をいたします。
? ?
気まぐれに形を変えていく雲は、古来より哲学者・科学者の悩みの種でした。あのアリストテレスやデカルトでさえも雲の解明は優先課題としながらも、かなり手をやいたようです。劇作家ゴールドスミスの言を借りれば「すべての雲は動き、すべての雨は降って哲学者の自尊心をいたぶり、空気の隠された性質を見せつけ、哲学者はそれを説明できないありさま」だったのです。雲の分類についても様々な者が挑戦するも、大衆を納得させる説明と呼称は19世紀になるまで現れませんでした。
? ? ?
そこに彗星のように現れたのが、30歳のアマチュア学者(化学品製造者職員)のルーク・ハワードでした。1802年2月に行われた講演会「雲の変位」は、理に適っていて、わかりやすい内容だったことで聴衆の大絶賛を受けました。ハワードは雲が実際に水滴と氷から形成され急速に冷却した大気下層部を上昇するに従い、気温の下降によって蒸気が凝結したものと主張し、空気の対流構造や発生位置によって形が変わる雲を「巻雲」「積雲」「層雲」の三つの基本形に分類しました。その上で各々の混合型「巻積雲」「巻層雲」「積層雲」「巻積層雲(乱雲)」を加えた計7種類に分類できることを、ハワード自身がスケッチした絵をもとに説明しました。
これまでこのようなシンプルで明快な分類を提示した科学者はいませんでした。この講演会にきていた出版社の幹部が直ちに本の執筆を依頼。ハワードの名と主張は一気に広まり、ここに世界で最初に雲の分類がオーソライズされました。(その後の議論によりハワードの分類をベースに現在は10種類となっています) 何とあの科学には一家言もつゲーテまでハワードを絶賛して会見を要望。そしてこの分類にそった雲の詩を書き上げました。
? ? ? ?
ハワードが講演をおこなった当時の英国では、科学・気象は一般市民の大きな関心事であるとともに娯楽のひとつでもありました。お金を払って科学の実験や講演を楽しんでいたのです。これは18世紀後半の異常気象や、気球やパラシュートの発明により、空や大気に関して科学の力で真理を知りたいという大衆の知的好奇心が背景にあると思います。そんな欲求もハワードの主張をあと押ししたのでしょう。まさに時を得てのハワードの講演でもあったわけです。これをきっかけとして気象学という学問が確立。ますます雲の行方に皆が注目されるようになったというお話でした。
【使用教材】雲の楽しみ方 著者 ギャヴィン・ブレイター=ビニー
訳者 桃井緑美子 2007年7月刊 河出書房
?
前回に引き続き雲について語ります。雲を眺める愉しさに嵌ってしまったからです。ブログのヘッダーの背景の写真も雲に変えてしまいました。あとこちら↓の雲ですがゲゲゲの鬼太郎の盟友である「一反木綿」に見えたので思わずシャッターをきりました。いかがでしょうか。
? ?
さて「雲を愛でる会」という団体があることはご存知ですか。本書はこの団体を発足させたイギリス人の現会長が書き下ろした本です。この会の声明書がなかなか、パンチが利いています。
われら雲をめでる会は雲が不当にも悪者扱いされていると考えている。
雲がなければ人生は果て無く味気ないものである
著者は、クラウドウォッチングが優雅で思索的な楽しみであることを強調するとともに、科学的に雲を知ることと芸術的に雲を眺めることは全く矛盾しないとし、「科学的な説明は理解できても想像力を揺さぶれはしない」と言った自然詩人のヘンリー・D・ソローの考えに異議を唱えています。私もこの点については著者の考えを支持します。
? ? ?
そして現在の分類にそって各雲の形成過程と特長・見分け方を解説し各々にキャッチ文をつけます。目に浮かぶようなキャッチで中々うまいなあと感心しますね。
積 雲 うららかな空にぽっかり浮かぶ綿雲
積乱雲 そそりたつ怒れる王(かみなり雲)またの名を雲界のダースベイダー
層 雲 低く垂れこめた幽玄の世界
層積雲 次々と衣装を替える千変万化の「くもり空」
高積雲 空に勢ぞろいするひつじ雲
高層雲 一瞬きらめくが凡庸な「おぼろ雲」
乱層雲 厚く空を覆って涙の滴を落とす雨雲
巻 雲 氷の結晶がつくる繊細な天使の髪「すじ雲」
巻積雲 魚市場で見つけた小雲のさざ波「鯖雲」
巻層雲 高い空から光の微笑みを投げかける薄曇り
? ? ? ?
もちろん科学的な解説もなかなか充実しています。雲をぱっと見てこれは何雲と言い当てるのは愛好家でも結構むずかしかったりするようですが、紛らわしい雲を見分ける方法が公開されています。例えば「高い空に浮かぶ巻層雲は太陽の光を遮らないので地面に影ができるが、高層雲の場合は影ができない」「腕を伸ばして三本の指を立てて三本指の幅よりも雲片が大きければ低い空の層積雲。一本の指の幅より小さかったら層は高いところにあり巻積雲。指三本よりも小さく一本よりも大きければ高積雲」などなど。
本書の最後にはモーニンググローリーと呼ばれるめったに見らえない巨大なロール雲を見に、イギリスからはるばるオーストラリアの片田舎に出かける様子が描かれています。雲を愛でるのも相当なエネルギーが必要なようですが、羨ましい情熱を感じるのは私だけではない気がします。
【使用教材】海はどうしてできたのか 著者 藤岡換太郎 2013年2月刊 講談社
人生に行き詰ったり素直な気持ちでいたいとき、私は海を眺めます。海に行くと同胞がいて、時には若者であったり主婦であったり御爺さんであったりするけれど、同じようにじっと海を眺め続けています。私は海に母なるものを感じます。そこは自分の故郷です。皆も母を感じつつ海を眺めているんじゃないかと勝手に思います。もちろんこの俳人も。
亡き母や 海見るたびに 見るたびに 一茶
へんに技巧をほどこさずに一茶の母への深い深い愛情が伝わってくる秀作だと思います。母なる海の誕生を知ることはは、自分のルーツを知ることにつながります。
マグマに覆われた原始地球の海から、いつ今のような水の海になったのか。諸説ありますが本書によればこんな感じのストーリーです。
・水は地球に降り注ぐ炭素質隕石の中にOHという形でふくまれていた。岩石や鉱物が分解したときに水として放出された。ただ水はマグマの灼熱の中で液体では存在できず水蒸気として大気中に留まっていた。
・約40億年ほど前に次第に地表化が冷えたことで、雲から凄まじい豪雨が長年にわたり降り続き水の海を形成した。
・当時は大きな陸地がない一面の海と一面の空が広がる水平線だけが存在する世界だった。海の組成は、二酸化炭素や塩酸が溶け込んだ強い毒性をもつ緑の海だった。
・約27億年前に酸素を放出するシアノバクテリアの光合成活動により酸素が海に排出され、鉄を酸化したことで、海底に「縞状鉄鉱層」という堆積物を形成。こうして緑の海は赤い海に変化した。
・更に藻類の光合成活動が活発化し、酸化する鉄が限度をむかえると約22億年前には大気中に酸素が放出され、陸上の岩石に含まれる岩石に含まれるナトリウム等が海にそそぎ、海水の塩素と結びつき食塩となり、次第に現在のような大気・海水の組成ができあがり青い海となった。
こうしてみると,海の変化は海自身のみならず大気と陸と生命の三つの要素が複雑に絡み合って形成されてきたことがわかります。これを「共進化」というのですが、この共進化によって次第に生命が多様化する環境がつくられていったことを知るとき、何か言い知れぬつながりを感じて、感動してしまいます。
最後に少し怖い話が書かれていました。海の寿命の話です。海水はプレートテクト二クスという地殻変動により海洋プレートと共に大陸下のマントルに流れ込んだあと、火山活動を通じて地上に水蒸気として排出されるらしいのですが、この循環が地球内部の冷却化によりとまることで、次第に海水が減っていく恐れがあるというのです。10億年後の話ではあるようですが、全てがつながっているゆえ、どこかで問題が生じると全てが機能しなくなるというリスクが発生してくる怖さ。この怖さを忘れることなく自然に接することが必要なのだと改めて思いました。
【使用教材】水のことのは ネーチャープロ編集室 2002年4月刊 幻冬舎
悲しくてどうしようもないとき 雨に濡れながらとぼとぼ歩くと
少しづつ生まれ変わっていくような ふしぎな気がしたことがあります。
うれしいときには 光色に輝く海が よかったよかったと
波語のエールをおくってくれました。みず・・みず・・みず
いのちは水の子どもなので いつも水に守られているのかもしれません。
この地球さえも空も空気も風も月も
すべてが水の如く淡く 水の如く清く 水の如く流る
(徳富蘆花 自然と人生より)
これは本書の「はじめに」で掲載されたものですが、こんな感じで先人たちの作品も交え水にかかわる「ことのは」383語と160枚もの素晴らしい写真を加えて掲載しています。地球は水満ちる惑星。様々な形で地球に水が存在していることがよくわかります。
水というとごくどこにでもある化合物と思い込んでいますが、化学的にはかなりユニークな存在のようです。地球の水の97%は海水として存在していますが「温まりにくくさめにくい」という特徴により地球の寒暖差は一定の範囲内におさえられ生命が生きやすい環境が整っています。また通常固体は液体よりも密度が大きいのですが、氷は水よりも密度が小さいので、氷河に覆われた極寒地においても海底は凍ることなく生物の居場所を提供しています。飲料としての価値のみならず、徳富蘆花のいうように生命は水に守られているのです。
本書では、海中 浜辺 渓流 滝 池 雲 霧 霜 雪と様々な形態の水が登場します。こうしてみると本当に水は変幻自在に形をかえて我々にメッセージを伝えてくれているんですね。古来人類も、水が自分たちの命綱であることをしっかり理解して水と会話をしてたようです。例えば「ニライカナイ」という言葉。沖縄では海からやってくるものはみんな佳きものとし、水平線の向こうに浄土ニライカナイがあると信じられていました。またカムイワッカの滝はアイヌ語で「神の水の滝」の意。さみだるの「さ」は神の意をこめる接頭語で天の高いところから尊い水が垂れてくる意 (さみだるの名詞形が五月雨)
水と神はきってもきれないものとして受け止められていたのです。
水は変幻自在なので雨でも雪でも微妙な違いの表情をみせます。表情が変わればそれに見合う言葉をつくるのが自然を愛する者の常。例えばイヌイットは、雪の色を数十の言葉でいいわけるそうですし、我々日本人も少ない量の雨でも「細雨」「小雨」「時雨」などと使い分けます。水は物理的に生命をいかすとともに、心情においても生命をいかしてくれているのかも知れません。
【使用教材】死なないやつら 著者 長沼毅 2013年12月刊 講談社
科学界のインディジョーンズ 長沼毅氏の生命論はいつ読んでも面白く新たな発見があります。深海や南極など辺境な地にむかう行動力も凄いけど、氏の最大の魅力はとことん突き詰めるその思索の深さにあると思っています。
生命の定義とは通常「代謝する」「増殖する」「細胞膜がある」という3点セットで語られ、それで済まされることが多いんですが、長沼氏はそこで留まらず「生命とは何かーとは何か」という哲学的な問いを我々読者につきつけた上で持論を展開していくのです。
長沼氏はまず生命を「負のエントロピーを食って構造と情報の秩序を保つシステム」と定義した物理学者のシュレディンガーの説を紹介します。エントロピーの増大とは、物理の最強法則で、宇宙空間に存在する物質は必す乱雑さを増大させるという法則です。負のエントロピーはその逆ということですから、生命は物理法則に反して秩序を保ち続けようとすることになります。生命自体、化学的にも不安定な有機物らしい。長期の不安定さは死を意味するので、死を回避するためエネルギーを摂取し続けることが余儀なくされるーこれが生命ということです。
??
長沼氏はここで環境に対応した「進化」こそが 生命の維持継続の重要要素であるとして、地球最初の生命ーつまり我々の先祖である「微生物」について言及します。
いまも深海や極寒の地に生息する微生物は、驚くべき能力をもったものがいるようです。例えばハロモナスという高度好塩菌は、高度の塩分があろうが真水だろうが、南極のような極寒だろうが、200度の熱水が吹く大西洋中央海嶺だろうが委細構わず棲息しています。その上、食べ物がないところでは化学合成により自分で栄養をつくりだして生きるというとんでもなくタフな生き物だそうです。
恐らく40億年前地球で最初に誕生した生き物はこのようなとんでもないタフな微生物だったと思われます。そして単細胞生物から多細胞生物へと多様化・進化していくことで、40億年生命を絶やすことなくつないできたのでしょう。長沼氏は、これを「渦巻としての生命」とします。渦巻を構成する水はどんどん入れかわっていきますがうずまき自体が消えることはない。そんなリレーがこれまでの生命の辿ってきた道だというのです。
ここで終われば、めでたしめでたしとなるわけですが、ここで終わらないのが長沼流です。実は宇宙は「最強の物理法則であるエントロピーを増大させるために生命を誕生させたのではないか」というのです。つまり生命があった方が宇宙は乱雑になり早く消滅するというのです。何ともやりきれない結末です。この説を読んで私はさらに悲観的なことを考えてしまいました。宇宙はふつうの生命の誕生ではまだ生ぬるいとして、人間を誕生させ宇宙自らを消そうとしているのではないかという考えです。
長沼氏はここまで悲観的ではなくホモサピエンスは、さらにホモ・パックス(平和な人)ホモ・ホスぺス(おもてなしの人)へと進化していくことを示唆して私の悲観論を打ち消してくれました。私もそう願います。
【使用教材】深海で生命の起源を探る
著者 NHKサイエンスZERO取材班+高井研・JANSTEC 2011年10月刊 NHK出版
生命誕生の起源については諸説あります。彗星の中に生命のタネが紛れ込んで地球に落下してきたという宇宙起源説もありますが、現在最も有力なのは深海の熱水噴出孔周辺で化学合成により発生したという説です。海嶺(何千`も続く海底山脈)で生じるプレートの移動により割れ目が生じ、そこから黒煙や白煙が生じます。これが熱水噴出孔です。
1977年 米国の有人深海探査機「アルビン号」が世界で初めて熱水噴出孔を発見しました。その周辺には奇妙な生き物がうようよしていたと言います。太陽の光も届かず数百度の高温・高気圧の想像を絶する環境で「どうして彼らが生きているのか」世界中の学者が驚きました。特に注目を浴びたのがチューブのような管をもつミミズような環形動物です。この動物は口も消化器も肛門もなく、上のチューブからは噴出孔からはきだされる硫化水素を、下からは海水をこしとり、共生している硫黄酸化細菌に化学合成をさせて出来上がった有機物をエネルギーして生きているというのです。この生き物の名をチューブワームと言います。
この発見で、多くの科学者が「このような生物群が大古の生命の姿なのではないか」と考え、深海誕生説が支持されるようになってきました。ただ太古の海は、酸素は含まれていないので、現在と同じ環境ではありません。現在では水素と二酸化炭素によりメタンが生成され、このメタンをエネルギーにした細菌が地球初の生命ではないかという説が有力です。(現在の海底下でメタン菌によるメタン生成が起きている証拠も見つかっているようです)
「しんかい6500」という日本の誇る有人深海探査機があります。文字通り6500bの深海に潜る能力をもち、これまで世界中の深海で数々の発見をしています。深海は未だ知られていないことが多く、新たな生命の発見はもとより資源の採掘という面でも益々注目される領域です。先日、横浜市にある「三菱みなとみらい技術館」で「しんかい6500」の機内設備を再現したものを観ました。この小さな穴から様々な発見がされたことでしょう。
←しんかい6500から深海を眺める
←しんかい6500の全体
この他、日本には「ちきゅう」という海底下7000bなで掘削する能力をもつ地球深部探査機もあります。この「ちきゅう」が2010年9月沖縄トラフと呼ばれる一帯で熱水噴出孔の海底下の岩石から直接微生物を採取しました。比較的低温の海底堆積物での掘削はこれまで行われていましたが、このような熱水の中での微生物の摂取は世界で初めてということで、大きな注目を浴びたということです。
現在世界で発見されている熱水噴出孔は550か所。今後も深海の探査が進む中で益々その実態が明らかにされ、生命の起源の謎も解明されていくことでしょう。
生命の限界に迫る 「しんかい6500」世界一周航海 QUELLE2013 ダイジェスト - YouTube
前回 日本が誇る有人深海探査機「しんかい6500」に少し触れましたが、こちらの画像は、昨年1月5日に横須賀港を出港して11月30日まで世界中の深海を探査した様子を、ダイジェストで収録したものです。(ちなみにしんかい6500は、1990年の初潜水から2014年3月末段階で実に1381回の潜水を行ったとのこと)
探査場所は、インド洋?ブラジル沖?カリブ海?南太平洋とまさに世界の深海を巡り、堆積物や生物を採取しています。船内の様子や採掘している様子、また熱水噴出孔から噴き出る黒煙・白煙の様子が納められています。また狭い機内の中に3人で作業されている雰囲気もリアルに伝わってきます。
やはり百聞は一見に如かずといいますが、ミミズが属する環形動物やエビなどの甲殻類 イソギンチャクのような刺胞動物など、深海には多種多様な生き物が逞しくいきているんですね。捕獲された生き物たちはさぞ驚いたことでしょう。ちょっと気の毒になりました。
気圧は10b深くなるごとに1気圧上昇します。従って6000bの深海の気圧は約600気圧。恐ろしいほどの水圧がかかっています。これらの動物が、この高圧化の中で繁栄していると思うと、地球生命の危機がおとづれた時も生き残るのは、こうした生物たちかも知れないと思いました。彼らはリスペクトに値する存在なのです。
【使用教材】ダイヤモンド号で行く地底旅行 著者 入松徹男 2005年9月刊 新日本出版社
「灯台もと暗し」といいますが,実は我々は足をつけている地面の内部がどうなっているのかをあまり知りません。宇宙や深海は実際に出向き、映像も撮って視覚的に確認できていますが、地底については、人類は半径6400`のうちわずか地下12`までにしか達することができておらず、科学的分析(地震波の観測等)により内部を想像するしかないのが実情です。
よく地球内部の構造は、ゆで卵を例に説明されます。表面の殻が「地殻」で、大陸では地下30`程度、海面では地下6`程度の深さです。卵の白味にあたるのが「マントル」。黄身にあたるのが「核」です。我々は、半径の1%にも満たない皮の上で生きていますが、まだ殻より内部のマントルを見た者はいません。
本書は、地底探査機ダイヤモンド号に乗って擬似的に地球内部を覗くという設定です。生涯学習センターで小中生向けに講義をすることになった著者がSFの巨匠ヴェルヌの「地底旅行」からヒントを得て講演したものを編集し直したものです。探査機がダイヤモンドで作られているのは、地底の超高圧に耐えれるからで、年に数pほど動く海洋プレートの上にのせて、大陸プレートの下に潜り込んで地球内部を見ようという構想です。そのため地球に戻ってくるまでに2億年かかるという大胆な設定になっています(笑)
大陸地殻は主に花崗岩質でできていますが、海洋地殻は花崗岩よりも密度の大きい玄武岩質でできているため重い海洋プレートは軽い大陸プレートと衝突すると、その下に潜り、更にマントルに潜り込みます。マントルは地下2900`までに達し、熱の対流の激しい上部マントルと、比較的穏やかな下部マントルに分けられます。
上部マントルは温度が1000度5万気圧の世界で、低温では光を発しない岩石も、この温度ではオレンジ色やガスの炎のような青みを帯びた光を発するといいますから、決して暗黒の世界ではなさそうです。マントルは主にかんらん岩・輝石でできており、ダイヤモンドも含め宝石があちこちにころがっているわくわくゾーンです。
地球の中心にある核は、液体の「外核」と固体の「内核」に分れ、主に鉄が中心元素です。外核内の溶けた鉄の対流は、有害な宇宙線から我々を守っている地球磁場を発生させている(ダイナモ理論)と考えられており、液体で存在する意味が読み取れます。またこの鉄に引き寄せられた金や白金といった親鉄元素もあり、核は貴金属の宝庫とも言われています。外核が内核と接する地下5150`では溶けた鉄が結晶化するため、そこは鉄の雪が降り積もる白銀の世界が拡がっているそうです。
内核は6000度という超高温ですが、外核のような活発な対流活動は期待できないためダイヤモンド号もここで旅を終了させ、その後は上昇対流にのって地球に戻るという形でお話は終了します。
今後、地下の領域についての研究は加速的に進むと思われます。深海で予想以上に多様な生き物がいたように、地底奥深くにも多様な生き物が棲息している可能性もあります。海底探査機「ちきゅう」で海底を掘削して初のマントルを目指す動きも具体化されており、今後もその動きが注目されます。
【使用教材】ときめく鉱物図鑑 監修 宮脇律郎 2012年5月刊 山と渓谷社
今回は少し肩の力を抜いて鉱物にときめきたいと思います。水の地球と言われますが、体積では圧倒的に岩石でできています。したがって岩石・鉱物を理解しなければ地球を理解したことにはなりません。さていきなりですが問題です。岩石と鉱物の違いは何でしょうか? 実は私もこの本を読むまでは知らなかったのですが (-_-;)
答えは、鉱物は岩石を構成する各々の物質であるということです。鉱物は、ほぼ一定の化学組成と原子配列(結晶構造)をもちます。そのため鉱物は化学式であらわすことができます。(水晶SIO?など) また化学組成が同じでも結晶構造が変われば違う鉱物とされます。最も有名なのが化学式C(炭素)のダイヤモンドと石墨です。最初聞いた時は信じられませんでした。
地球には4200種類もの鉱物は存在すると言われています。そして鉱物が集まったものが岩石です。なので岩石を化学式であらわすことはできません。例えば大陸地殻の主要岩石である花崗岩は、黒雲母・長石・石英などの鉱物で構成され、海洋地殻の主要岩石である玄武岩は斜長石・輝石・硫鉄鉱などの鉱物で構成されています。
岩石にときめく人はあまりいないようですが、鉱物にときめく人は結構いるようです。特に古来より権力者は、権力を行使して鉱物を集め身を飾りました。青金石とも言われるラピスラズリは身に着けていると凶事から守られるとされ、特に人気があったようです。ツターカーメンのマスクでも使用されています。
ラピスラズリは権力者のみならず芸術家にも愛されたようで、「石っこ賢さん」と言われた鉱物愛好家の宮沢賢治も、瑠璃(ラピスラズリ)の深い青空に例える作品を書く一方、妹の死を悼む「オホーツク挽歌」では、深い悲しみでみつめる波を「ずいぶんひどい瑠璃液だ」と表し心象風景を表現する素材として用いました。また、画家のフェルメールは顔料としラピスラズリを使用していたようで、代表作の「真珠の耳飾りの少女」では、少女が顔にまく青いターバンに使われたそうです。
本書は美しい写真と簡潔明瞭な解説で、ときめく鉱物を紹介しています。ちなみオパールはこんな感じです。
オパールの特徴は、浮かび上がる虹色でしょうか。虹ができるのはちょっとした光のマジック。オパールには流状の酸化ケイ素の粒が規則正しく配列されている層があり、その層の繰り返しの長さが目に見える光の波長に近い虹色があらわれます。成分に水が含まれているため熱を加えたり乾燥させたりすると水分が失われひび割れしやすくなります。石言葉は「希望・幸福」
極彩度7 身近さ9 硬度6(ちなみにダイヤモンドが硬度10) 10点満点
実は私の誕生石はオパールなのですが、私が最近「水が命、水が命」と言うのも、やはり水分がなくなるとひび割れてしまうからなのだと合点がいきました。あと石言葉の希望というのもリーチですね。歳をとるほど希望が必要だと思ってますので。極彩度7 身近さ9 硬度6という採点も、凡人の私にあっていると思います。鉱物おそるべし。
「雲は天才である」という石川啄木の小説がある。
確かに雲は天才である。
天才は世界を変えるが,雲も地球を変えたのだから。
約46億年前,地球の表面が灼熱のマグマオーシャンで覆われていたとき
水は液体の状態を維持できず
大気中に水蒸気を集めた雲の姿で、その出番を待っていた。
次第に隕石の衝突はおさまり、地球は冷え、ついにその時がやってきた。
雲から水蒸気は水にその姿をかえ、大量の雨となって何年も地球に降り注いだのだ。
そして海を形成し、海水は再び水蒸気となり雲を形成し、
雲から再び雨となって地表に降り注ぐという素敵なサイクルをつくりだした。
雲は水を地球に提供してくれるだけではなかった。
その水の中でなにかが起こったのだ。地球内部で発する熱をエネルギーとして
無機物から有機物への化学合成がおこり、細菌のような生命が誕生した。
もう40億年ほど前の話だ。
太陽系の歴史の中で、この事件ほど画期的なものが他にあるだろうか。
まだ二酸化炭素と窒素が中心で酸素が殆どない大気の時代のお話だ。
誕生した生命は、過酷な環境の中で、生き続けた。
雲は水となって天から降り注ぎ、水と地球は協力して
大変なものを創り上げてしまった。
もう後戻りはできない。
でも生命の話は始まったばかりだ。
このあと、生命は度重なる試練にたたされるのだが、
まあその話は、空高くたなびく巻雲でも眺め
生命の不思議さに心を寄せながら ゆっくりとしていこうじゃないか。
時間はたっぷりあるのだから。
|